「知覚力」は、誰かに向けて発信するときの、「誰か」を観るのに大切なんじゃないか。

『知覚力を磨く』(神田房枝、ダイヤモンド社)という、本を読みました。

ものごとの理解っていうことに興味があって、この本は、自分が普段生活している’世界’をどう理解するかということに気づきをくれそうだったので読んでみました。結果として、この本のタイトルにある「知覚力」というのは、情報をどう受け取って自分で解釈していくかということで、たとえば、ブログで発信するときの対象とする人をイメージすることにも使えそうだなと思いました。

こんな感じの本

◎神田房枝さんという、法人教育コンサルタントや美術史学者として活動されている方の本。絵画を使って、知覚力や思考力といったものを向上させるトレーニングを提供されているそう。

◎「知覚すること」をこの本では、「自分を取り巻く世界の情報を、既存の知識と統合しながら解釈すること」と定義していて、そのための能力が「知覚力」。つまりは、本を読むときとか、仕事のやりとりとか、学校生活とか、そういった日々の生活の中で得られる情報をどうやって理解していくか、ということかなと。ただ、「見る」だけじゃなくて、観察して、どんなことを見つけられるか。

◎知覚力が大事なのは、人間の知的生産には「知覚→思考→実行」というプロセスがあり、それらプロセスの、スタート地点だから。

◎知覚力を磨くためのトレーニングに「絵画観察トレーニング」というものがある。米国イェール大学メディカルスクールで生まれた。スクールを始めた、アーウェン・プレーヴァーマンが、成績が優秀で入学してくる学生たちが、患者の皮膚の変色など、医者にとって大切な、観察の力が失われていると感じたことがきっかけ。絵画を観察することを通して、観察力をあげる。その後、彼は研究を重ね、そのトレーニングの効果がハーバード大学など他の大学でも認められるようになったとのこと。

◎絵画を観察するのがいいのは、

  • 絵画は、今生きている世界と、別世界のものだから、バイアスが入りづらい。
  • フレームで世界が区切られているから、観察がしやすい。リアルで観察することも大事だけれど、区切りがないし、人やモノが動いているので、むづかしい。
  • 個々の部分だけをみるのではなく、それらをつなぎ合わせて、全体図を理解することが必要になるから。

実際の見方の4つの技術。その絵画鑑賞トレーニングで、このやり方しているわけではないですが、観察するときの技術が4つ紹介されてます。

  • 全体図を観る
  • 組織的に観る
  • 周縁部を観る
  • 関連づけて観る

その情報の一つ一つをみるのじゃなくて、全体がどんなことをいっているのか、どんな背景があるのかってことを理解資料とするのが大事ってことですね。

情報は検索すればすぐ見つかる時代になって、今度は、その情報たちをどうつなぎ合わせていくかとか、どう活用するか、どう共通点を見つけるかが大事だってのはよく聞かれる話だと思います。知覚力というのは、どう観察するか、物事をむすびつけていくかっていう総合的な能力なんだろうなと。

おもしろかった部分

この本の中で、おもしろかったのは、「個人の解釈に価値がある」ということ。

絵画は作者それぞれの解釈(風景とか人物とか、そういった’世界’に対して)が描かれていて、そういう「どう解釈したか」ってことに価値がある。僕は、けっこう「正解」を探してしまう思考にとらわれがちなので、この言葉はとてもおもしろかったです。自分自身がどう解釈するかってことも大切にしていいんだなと。

まぁ、この絵画たちや画家がすごいのは、その解釈を「形」にして、他の人がそれを認めているってこともあると思うので、僕も「自分の解釈」をなんとか、形にしていけるような行動をとっていかないとなと思ってます。

あともう一つが、いわゆる「リベラルアーツ」についての部分。

今、いろんなところで、「教養が大事」と言われていますが、著者は、「リベラルアーツは『幅広い教養の習得』ではない」と書いています。

リベラルアーツというのは、古代ギリシャ時代に起源を持つ、教育の概念で、自由7科というわれるもので構成されています。文法学、論理学、修辞学、の3学と、算術、幾何学、音楽、天文学の4科です。

著者はこの中でも、「文法学」の存在について書いていて、それは単に、「言語を学ぶ」ということではなかったとのこと。

古代ギリシャ語やラテン語などの言語は、文中の単語を、その数とか性、関係性などを考えながら、適切に文章を理解していく必要があった。それは、「いわば徹底したパターン認識トレーニング」であったとのこと。要は、どうその文章を観察して、理解するかってことですかね。

僕は、ポルトガル語を勉強して、しゃべれるようになって、今は英語やフランス語といった外国語を勉強していますが、「言語を学ぶ」ということには、単に、外国語を喋れるようになるってことだけじゃない、面白さがあるといつも感じています。

なので、こんなふうに、古代ギリシャ時代から、「どう観察するか」という能力の基礎としても捉えられていたんだなというのは、おもしろかったです。

まとめ

見えないものを観ようとする力というのは、その対象をよりよく理解する力でもあると思います。例えば、ブログを書くときでも、見えない「誰か」を観て、その人に向けて書ければ、きっと届く。まずは、この本の技術を意識して、絵画を鑑賞することをはじめてみたいと思います。

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